平成１９年度事業報告書

（平成19年4月1日から平成20年3月31日まで）

�T．研究助成事業
１． 助成研究の募集
　　本年度の研究助成事業は、従来通り一般研究助成と若手研究助成枠（研究内容としては、より基礎的なものも含む）を設けて行った。募集に当っては、募集要綱に下記に示す大項目６、小項目２６の環境保全技術課題を例示するとともに、課題の背景についても解説し、さらに特に関心のある課題として下記の８項目を掲げることで、応募者のテーマ選定の参考とした。
　平成１８年度は応募件数が過去最多となったことを受けて、本年度の公募も前年度と同様に、環境研究実施法人窓口へのメール連絡と財団ホームページへの募集要綱掲載に加え、環境関係の研究を実施している国公私立大学、工業高等専門学校及び独立行政法人を含む公的研究機関等の３１３法人、６０３箇所に募集情報（募集要綱、ポスター、基金ニュース、助成研究成果要旨・概要集）を直接送付することにより行った。また例年通り、申請書様式のホームページからダウンロード、メール添付での申請書の受領など、応募者・事務局双方の便宜を図った募集活動を行った。

＜鉄鋼業に関連する環境保全技術課題の具体例＞　

(1) 大気環境保全技術
　　�@ 大気環境対策技術の省エネルギ−化、低コスト化及び高効率化
　　�A 固定発生源起源の浮遊粒子状物質（ＳＰＭ）及び微小粒子状物質（ＰＭ2.5）
　　�B 発展途上国に適用可能な簡易又は安価な排ガス処理技術

(2) 水質保全技術
　　�@ 水処理技術の省エネルギ−化、低コスト化及び高効率化
　　�A 亜鉛等重金属の生態影響評価及び除去技術
　　�B コ−クス炉ガス洗浄排水中のアンモニア性窒素及び鋼材の硝酸洗浄排水中の硝酸性窒素の除去技術
　　�C 排水中の有価物質の濃縮・回収に関する技術
　　�D 土壌汚染に関する測定技術、影響評価手法及び汚染土壌浄化技術
　　�E 閉鎖性海域の浄化技術
　　�F 発展途上国に適用可能な簡易又は安価な排水処理技術

(3) 発生物の処理・再利用技術
　　�@ 鉄鋼スラグ（高炉スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ等）の高付加価値化及び利用技術
　　�A 鉄鋼ダスト、鉄鋼スラッジ、鉄鋼スラグ等からの鉄、ニッケル、亜鉛、りん等の有価物の濃縮、分離及び回収の技術
　　�B 鉄鋼スラグの海域利用等における環境創造・環境影響評価
　　�C 鉄鋼発生物の減量化、減容化及び再利用技術

(4) 有害大気汚染物質
　　�@ ダイオキシン類等非意図的生成物の測定分析法、発生抑制技術及び防除技術
　　�A ニッケル化合物の測定分析法、発生抑制技術及び防除技術　

(5) 地球環境問題
　　�@ 地球温暖化メカニズム
　　�A 越境汚染問題
　　�B 鉄鋼製造プロセスにおける抜本的な二酸化炭素排出削減技術
　　�C 鉄鋼製造プロセスにおける新エネルギー（バイオマス等）の利用技術
　　�D 鉄鋼副生ガス等からの水素製造技術
　　�E 鉄鋼副生品あるいは鉄鋼関連技術を利用した二酸化炭素分離・固定化技術

(6) エコプロセス
　　�@ 環境汚染物質の発生を抑制・極小化する鉄鋼製造関連技術
　　�A 鉄鋼製造プロセスにおける廃棄物利用技術
　　�B 循環型社会の構築に資する鉄鋼関連技術
　　�C エココンビナートを実現する産業間連携技術

＜特に関心のある環境保全技術課題＞

　　(1) 固定発生源起源の浮遊粒子状物質（ＳＰＭ）及び微小粒子状物質（ＰＭ2.5）
　　(2) 土壌汚染に関する測定技術、影響評価手法及び汚染土壌浄化技術術
　　(3) 亜鉛等重金属の生態影響評価及び除去技術
　　(4) 鉄鋼スラグ（高炉スラグ、転炉スラグ、電気炉スラグ等）の高付加価値化及び利用技術
　　(5) ニッケル化合物の測定分析法、発生抑制技術及び防除技術
　　(6) 鉄鋼製造プロセスにおける廃棄物利用技術
　　(7) 鉄鋼製造プロセスにおける抜本的な二酸化炭素排出削減技術
　　(8) 鉄鋼副生品あるいは鉄鋼関連技術を利用した二酸化炭素分離・固定化技術

2.応募状況

　　募集活動を強化した効果が現れ、応募数は、一般１２０件、若手４３件、合計１６３件となり、過去最多を記録した前年度には及ばなかったが、過去３番目の高い水準であった。分野別には下表の通りである。

３.研究助成の決定

　今年度も昨年同様、助成研究の充実を図るため研究助成金の枠を７５，０００千円としている。上記応募案件の中から、技術委員会の選定を経て第１１２回臨時理事会において、一般助成研究４３件と若手助成研究１４件を決定した。その後、１件の辞退があり、助成研究は５６件となった。分野別に整理すると以下のようになる。

　　　　下図に、昭和５５年度以降の応募件数、分野別の助成件数の推移を示す。

本年度の応募・助成件数に関する特記事項は下記の通り。（　）内は昨年度の実績
�@ 応募総数が１６３件（１９６）であった。
�A 助成件数は５６件（５７）で、応募件数の３４％（２９）が採用された。
�B 分野別助成件数は、水質２４件（２２）、大気８件（９）、発生物９件（５）、有害大気４件（３）、地球環境８件（１１）、生体影響０件（０）、エコプロセス３件（６）、その他０件（１）となり、水質と発生物で助成件数が増加した。
�C 初めての申請者が７７名（１０４）と全体のほぼ半分であった。
�D 助成件数５６件のうち、継続研究が２１件（２３）、新規研究が３５件（３４）で、このうち、初めての助成者は２９件（２６）となった。
�E 若手研究助成の申請者は４３名（４７）で、このうち１３名(１２)が採用された。
�F 大学からの応募は１４１件（１６８）で、このうち５２件（５０）が採用された。また、初めての大学への助成が２件（２）あった。
�G 工業高等専門学校からの応募が８件（８）で、このうち、２件（１）が採用された。
�H 独立行政法人からの応募は１１件（１７）で、このうち２件（６）が採用された。（独）産業技術総合研究所１件（４）と（独）理化学研究所１件（１）である。
�I 初の助成先が６件（３）であった。内訳は、大学が５件（２）、工業高等専門学校が１件（１）である。
�J 助成案件の助成金申請額、研究総額に対する助成金額の割合は、各々１００％（１００）、５３％（５０）となっている。

４．助成研究者との技術交流会及び研究討論会の開催

(1) 技術交流会
　本交流会は、助成研究の初期段階において、助成研究者の研究現場に鉄鋼技術者が訪問し、研究課題や研究の進め方等について議論を行い、技術交流を深めることを目的としている。本年度は、平成１９年度助成研究者１５名と下記のとおり技術交流会を実施した。　

(2) 研究討論会
　本研究討論会は、助成研究が進んだ段階で、助成研究者を招待し、研究成果・今後の研究課題について鉄鋼技術者と討論することを目的としている。本年度は、平成１８年度助成研究者からの成果報告をもとに、下記のとおり３回の討論会を実施した。

�U．調査・研究事業

１．調査事業
　　調査事業については、本財団の主事業である研究助成事業に資するため、鉄鋼業に関わる環境保全技術上の諸課題を踏まえ、広く知見の収集・調査を行った。
　　具体的な調査テ−マは以下のとおり。
　(1) 平成１９年度LCA的視点からみた鉄鋼製品の社会における省エネルギー貢献に係わる調査
　(2) 鉄鋼業の温暖化費用対効果評価（ステップ２）
　(3) ポスト京都戦略基礎調査

２．研究事業
　　研究事業については、当財団の中に「電気炉HCB低減研究会」（主査 東北大学 葛西 栄輝 教授）を設置し、学識経験者の参画を得て、「製鋼用電気炉からのHCB発生及び排出低減に関する研究」を前年度に引続き実施した。研究期間は平成１８年６月〜平成２０年５月の２年間の予定である。

�V．普及・広報事業
　　平成1９年度は、以下の普及・広報事業を行った。

１．助成研究成果要旨・概要集の印刷配付
　　平成１８年度分３６件（大気関係６件、水質関係１５件、発生物関係１件、有害大気関係１件、地球環境関係９件、エコプロセス関係３件、その他１件）を研究成果の活用を推進する為に大学、公的研究機関等へ広く配付した。

２．助成研究成果概要の外部デ−タバンクへの登録
　　一般の研究者が助成研究成果にアクセスできるように研究成果概要をＪＳＴ（（独）科学技術振興機構）及びＧｅＮｉｉ（（財）助成財団センター）へ登録した。
　　（平成１８年度助成分３６件、累計４７３件）

３．助成研究成果報告書データベースの一般公開
　　財団の主事業である環境研究助成事業の成果をより広く社会に還元・普及していくことを目的に、助成した環境研究の成果概要および成果報告書を収録したデータベース「ＦＥＲＡＳ」をホームページ上に一般公開している。「ＦＥＲＡＳ」には、昭和５５（１９８０）年からの成果報告書が収録されており、今回、平成１７年度分３６件、平成１８年度分３６件を収録して、合計６１４件となった。
　　＊ ＦＥＲＡＳ：The Fruits of the Environmental Researches Aided by SEPT

４．助成研究の成果
　　平成１８年度の助成案件５７件についての特許調査では、既に出願６件、出願の予定４件となっており、助成研究の約１／６が特許に繋がる研究テーマとなっている。

５．研究成果報告会の開催
　　一般公開の研究成果報告会を次のとおり開催した。

６．製鉄所見学会の開催
鉄鋼業に対する助成研究者の理解を深めていただくことを目的に、前年度助成研究者を対象に第１回の製鉄所見学会を開催した。

期日：平成１９年１０月１９日
見学先：新日本製鐵�褐N津製鐵所、同技術開発本部総合技術センター
参加者：１６名

７．ホームページへの鉄鋼環境基金ニュ−スの掲載等
財団のＰＲのため、広く関係者がアクセスできるようホームページに鉄鋼環境基金ニュ−ス（第４１号、第４２号）を掲載した。
また、募集開始、募集要綱、応募状況、助成者決定、成果報告会の開催案内、成果報告会の開催報告等の情報をホームページ上にタイムリーに発信した。

�W．会　議

１．理事会
　　　本年度は、４回開催し、理事長及び専務理事の互選、事業報告、決算、事業計画、予算及び研究助成の決定などの重要事項を審議決定した。
(1) 第１１０回臨時理事会
　　開催日　平成１９年４月１０日
　　議　題
　�@ 理事長及び専務理事の互選
　（理事長）　　嶋　宏　　新日本製鐵株式会社代表取締役副社長　　　
　（専務理事）　青野　照彦　財団法人 鉄鋼業環境保全技術開発基金事務局長
(2) 第１１１回通常理事会
　　開催日　平成１９年６月２７日
　　議　題
　�@ 評議員の変更
　　　 （辞任）　池田　仁　　トピー工業株式会社常務取締役
　　　 （就任）　樫尾　茂樹　大阪製鐵株式会社取締役生産技術部長
　�A 技術委員の変更
　　　 （辞任）　菱田　一雄　菱田環境計画事務所長
　�B 平成１８年度事業報告
　�C 平成１８年度決算報告
　�D 特定公益増進法人であることの証明申請
　�E 平成１９年度寄付金の募集　
(3) 第１１２回臨時理事会
　　開催日　平成１９年１０月１７日
　　議　題　　　　
　�@ 評議員の変更　　　　
　　　　（辞任）　小野田　聡　元　電気事業連合会立地環境部長
　 　　 （辞任）　青木　秀生　石油連盟常務理事
　　　　（就任）　渡邊　広志　電気事業連合会立地環境部長
　　　　（就任）　波田野　純一　石油連盟常務理事
　�A 第２８回（２００７年度）研究助成金の交付
(4) 第１１３回通常理事会
　　開催日　平成２０年３月２６日
　　議　題
　�@ 平成１９年度改訂収支予算書
　�A 平成２０年度事業計画書　　　　　　　　
　�B 平成２０年度収支予算書　

２．評議員会
　　　本年度は、３回開催し、事業報告、決算、事業計画、予算及び研究助成の決定などの重要事項を審議した。
(1) 第３２回評議員会
　開催日　平成１９年６月２０日
　議　題
　�@ 監事の変更
　　　（辞任）　井上　清彦　元　鐵鋼スラグ協会常務理事（平成１９年６月３０日付）
　　　（就任）　内田　靖人　鐵鋼スラグ協会常務理事（平成１９年７月１日付）
　�A 技術委員の辞任
　�B 平成１８年度事業報告書
　�C 平成１８年度決算報告書書
　�D 特定公益増進法人であることの証明申請
　�E 平成１９年度寄付金の募集
(2) 第３３回評議員会
開催日　平成１９年１０月１５日
議　題
　�@ 第２８回（２００７年度）研究助成金の交付
(3) 第３４回評議員会
開催日　平成２０年３月１９日
議　題
　�A 平成１９年度改訂収支予算書
　�B 平成２０年度事業計画
　�C 平成２０年度収支予算

３．技術委員会
　本年度は、２回開催し、研究助成金申請案件審査と助成金交付対象研究選定等の研究助成に関する重要事項の審議を行った。
(1) 第９３回技術委員会
　開催日　平成１９年７月３１日
　議　題
　�@ 最近の鉄鋼業を取りまく環境問題の動向
　�A 第２８回（２００７年度）研究助成の審査分担
(2) 第９４回技術委員会
　開催日　平成１９年１０月２日
　議　題
　�@ 第２８回（２００７年度）研究助成案件の選定

以　上